「蔵人、」

「何ですか?さん」

「海に行きたい」





冬の海でのお話。





「気持ちいいーv」



は波打ち際を歩いていた。
赤屍は岩場に座っている。
海岸にはと赤屍しかいない。
なぜ、冬だというのに海にいるのか?
それは…



「…なぜこんなに寒いのに海に行きたいなんて言い出したのですか?貴女は…」

「来たかったから!」



突然が‘海に行きたい’と言い出し、来ることになったのだ。
赤屍は"風邪を引いてしまうかもしれないからと言って"止めたのだが、結局は負けて来てしまったのだった。



「ねぇー、蔵人もこっち来ないー?」



は赤屍にそう言った。



「…私はいいですよ。」

「あはは、そう言うと思った!」



はそう言ってまた波打ち際を歩き出した。



「あまり海に近づきすぎると濡れますよ」

「大丈夫だって!…あっ。」

「どうかしましたか?」

「靴が濡れた」

「まったく…さっき言ったばかりなのに…」

「ごめんなさい」

「そろそろ帰りましょうか。帰りに靴を買って差し上げますね。」

「ほんと!?やったあ!」



は海に背を向けて赤屍のほうに歩き出した。
と、そのとき……



「!! さん!」

「なぁに?蔵人…?」









ザ―――ン!!








「…くしゅん!」

「大丈夫ですか?」

「いったい何が…!?」



はしばらくその場に佇んでいたが、少ししてから自分が全身びしょ濡れだということに気が付いた。



「くしゅん!」

「何があったのかわからないのですか?」

「うーん…海に‘親の仇ー!!’って襲われたような…」

「…くすくす。そうですね、そんな感じです。」



が海に背を向けたその時、大波がを襲ったのだった。



「くしゅっ!」
「…風邪を引いてしまうかもしれないと言ったのに…。」



赤屍はそう言ってコートをにかけた。



「…ごめんなさい。…でも、風邪引いても蔵人が看病してくれるんでしょ?」

「クス…治るまでちゃんと面倒見て差し上げますよ。さて…帰りましょうか。」

「うん。」



二人は手をつないで帰っていった。










―――後日、はやっぱり風邪を引いてしまったとか。