ノック音と、扉の開く音が部屋に響く。
音の方に目を向けると、桔梗に頼まれたのであろう書類を持ったが立っていた。



「理事、書類お持ちしました。」

「さんきゅ、。そこ、置いといて。」



机の上を指差すと、は小さくため息をついて、けれども何も言わずに持ってきた書類を机の上に置いた。
ぱさ、と小さな音が響く。



「それじゃあ私はこれで…」

「待てよ」



出て行こうとしたの腕をつかむ。
そのまま引き寄せて、抱きしめた。



「…なんですか?」



冷めた声。
抱きしめているから、表情は見えない。











知っている。
こいつの瞳がオレを見ていないこと。
別のやつを見ていることくらい。

オレはこいつだけを見ているんだから、それくらい、わかる。










「…まだあいつが好きなのか?」

「……っ」



びくん、との体が強張った。



「…そう、か。」



抱きしめる腕に力をこめる。




















――――――オレだけを見れば、いいのに。



















ちゅ、と腕の中にすっぽりとおさまっているの耳に口付けた。



「やっ…やめてくださいッ!」



突き放される体。
ぬくもりが遠くなった。



「失礼します…っ!」


ばたん、と乱暴に扉が閉まる。
ぱたぱたぱたと走る音が遠くなった。























終わりのない追いかけっこ

(いい加減オレに振り向けよ)