「土門くんって、木野さんのこと好きだよね」
「……はっ?」

 たまたま一緒に帰ることになってこうして並んで帰っている土門くんの顔を見上げると、土門くんは口をあけたまま目をまんまるにして私を見下ろしていた。

「で、木野さんは円堂くんのことが好き、と」
「どうしたんだよ、いきなりそんな、」
「間違ってる?」

 私の発言に土門くんの足は止まってしまっていて、一歩前に出た私はくるりと振り返ってそう尋ねた。土門くんはなんだか微妙そうな、なんとも言えない顔をして後ろ頭を掻いていた。

「あー……まぁ、間違ってなくもないような」
「でしょ」

 そう言って少し勝ち誇ったような気持ちで笑うと、土門くんは呆れたようにため息をついて私のすぐ横に並んだ。

「木野さん、土門くんのこと好きになれば絶対しあわせになれるのにね」
「何言ってるんだよ」
「だって土門くん優しいし」

 ふたりが両思いになれば、きっと全世界探しても見つからないくらいしあわせなカップルになれそうだと思う。木野さんは明るくてかわいくて気がきくし、土門くんは優しくてあったかくて、木野さんのことを大切に思っているから。

「秋は俺みたいのタイプじゃねーの」
「ずっと一緒に居るからわかるんだ?」

 私がそう言うと、土門くんはまあそんな感じだとかなんとかごにょごにょ言っていた。

「でもまぁ、ずっと見てたらわかっちゃうよねー」

 だって私も、ずっと土門くんのこと見てるから知ってる。土門くんが、私みたいなのタイプじゃないってことくらい。でも優しいから、私のこと突っぱねないでくれてることも全部。

「じゃあ、また明日ね!」
「おう、またな」

 分かれ道で手を振ると、土門くんも手を振り返してくれた。さっきまでとても楽しかったし笑っていたのに、すぐに背中を向けて歩いていってしまった彼をなんだか泣きそうになりながら見ていた。