「うわぁ…すごい雪。外、真っ白だよ?」

「クス、そうだね。」






ゆきやこんこ






空から雪がどかどかと降る中、雪玉が飛び交う。
そこには、少年と少女が一人ずつ。



「ふふ、雪合戦なんて久しぶり!」

「クス、僕もだよ。」



雪玉を投げあいながら、少年と少女は笑う。



「不二くん、頭に雪つもってる」

「そういうだって。」



そう言いながらも、お互い雪を払ったりすることなく、笑いあって、小さな子供のようにはしゃいでいた。
走り回るたび、地面の雪が、跳ね上がる。いつの間にか、雪玉は飛ばなくなっていた。
そのかわり、地面の雪が跳ね上がっている。雪合戦から、追いかけっこに。
笑いは、降り続く雪のように、絶えることがなかった。



「つかまえたっ」



少女はそう言って、抱きつくように少年をとらえた。
そのまま、二人は雪の上へ倒れこんだ。



「真っ白、だね。」



灰色の空を見上げながら、少年は言う。



「うん、真っ白。」



少年に抱きついたまま、少女は言う。
少年と少女は顔を見合わせて、笑った。
何がおもしろいわけでもなく、ただ、自然に。
あたりには、幸せそうな笑い声が響いて。














、」

「んー?」



少年が呼ぶ名前に、少女は少年の顔を改めて見る。
少年は、少女に軽くキスをした。
からかうように、けれども愛しそうに。



「なっ…もう!」

「クスクス、可愛かったからつい、ね?」

「“ね?”じゃない!」



少女はそう言って怒りながらも、瞳の中は幸せ色で満ちていた。
少年と少女は、また、顔を見合わせて笑う。






少年は、少女を抱きしめて、そのまま上半身を起こした。




「そろそろ帰ろうか。」

「うん。」



二人は立ち上がって、歩き出した。
真っ白な世界に、二人だけの足跡を残して。