冬は人肌が恋しくなる季節で。
恋人たちは寄り添って仲良さそうに歩いていて。

そんな季節の帰り道、あたしはそれに影響されちゃったらしい。







甘えんぼ







「桔梗せんせ…」




ぎゅう、と抱きついて、顔を胸に埋める。

当たり前のことだけど、鼓動が聞こえて、あったかくって。
なんだか安心する。




「どうされたんですか?」

「…別になんでもないの」




なんでもないのはホントウ。

でもウソでもあるの。




「…今日は甘えんぼさんなんですね」




桔梗先生はそう言って頭を撫でてくれて。
その大きな手のひらに、あたしはまた安心する。


ああ、包まれてるんだなあって。






「あたし、桔梗先生のことが好き。」




何度も何度も伝えた言葉。

あたしはこどもだから、言葉でしか伝えられないし、




「桔梗先生は…?」




言葉がないと不安なの。




「そんなに心配しなくても同じ気持ちですよ。」




クス、と笑われる。




「ちゃんと…愛してます。離したくないくらいに」




背中に回された腕がぎゅう、と締まるのを感じた。

これだけでいい。

なんて思うのはやっぱりあたしがこどもだからかもしれないけど。




「うん」




あたし、幸せだから
これでいいの。