「あ、雨。」



さぁ帰ろうかと外に出て、雨が降っていることに気がついた。






雨の日が楽しみになった日






「冬獅郎ー」


さっきまで居た執務室に戻る。
彼はさっきまでと同じように机について、書類を片付けていた。



「んだよ、帰ったんじゃなかったのか?」

「帰ろうと思ったんだけど、ほら」



そう言って私は窓を指さす。



「雨か」



外を見た彼が呟いた。
外ではさっきよりも大粒の雨が降り注いでいる。


「私は置き傘してあるからいいんだけど、冬獅郎持ってないかなって思って」



私はそう言いながらソファーに体を預ける。



「持ってるなら帰るけど、ある?」

「いや、持ってねぇ。さんきゅ、すぐ終わらせるから」



彼はそう言って書類を片付け始める。






いつもは待ってる私のせいで冬獅郎を焦らせちゃいけないって、一緒に帰るなんてほとんどないけれど。

次の雨の日も楽しみだと、ソファーから彼を眺めて密かに思った。