休暇は、一緒の日に。







「隊長、“ゴールデンウイーク”下さい」

「…は?」




ばん、と机を叩く音と共に執務室に響く乱菊の声。
叩かれた机では日番谷が書類を片付けていた。




「現世では今ゴールデンウイークっていって学校とか仕事とか休みらしいんですよ」

「ほー」




乱菊の説明を受け流しながら日番谷は仕事を片付けていた。




「だから休み欲しいんですよ。織姫たちばっかりずーるーいー」

「阿呆か。それより仕事片付けろ、仕事。」




えー、とかなんとか文句を言う乱菊。
そこにひとりの女の子が入ってきた。




「失礼しま―――って、わわっ」

ーっ」




名前を叫びながら泣きつく乱菊。
書類を抱えたは何事かと目を丸くしながら扉の前で固まった。




「隊長ったらヒドいのよ。あたしに休み無しで働けって――」

「誤解を招くようなことを言うな。お前が急に休みくれとか要求したんだろ」




いつの間にやら乱菊のすぐ後ろに立っていた日番谷はそう言って乱菊の頭を小突く。
それから、が乱菊のアタックから死守した書類を受け取って机に戻った。




「あ、もしかしてそのお休みってゴールデンウイークってやつですか?」

「あら、知ってるの」

「誰かが話してるのが聞こえたんです。『現世にはゴールデンウイークっていう長いお休みがあるんだ』って。」




はそう言って微笑む。




「あたしも休み欲しいのよー」

「そうですね、たまにはお休みも欲しいですよね」




はやんわりとそう返しながら日番谷が座っている机まで行くと書類を受け取った。




「松本、」

「はい?」

「今日真面目に仕事したら休みやるよ」




届いたばかりの書類に目を通しながら日番谷はそう告げる。




「マジですか!?」

「いらねぇなら取り消すぞ」

「いっ、いりますいります!」




乱菊は目をきらきらさせながら立ち上がり、の受け取った書類をぱっと手に取った。




「じゃ、これ代わりに届けてきまーす!」

「ちょっ…松本!」




日番谷の言葉も聞かず、乱菊は鼻歌を歌いながら行ってしまった。




「絶対サボる気だな…」

「まぁいいじゃないですか」




ふたりのやりとりを見ながらはくすくすと笑って日番谷の言葉にそう返す。
日番谷はため息をついて、まぁ仕方ないかと呟いた。




「それよりお前は休み欲しくないのか?」

「え?」




その言葉にはきょとんとして日番谷を見つめる。
それから、ああ、とわかったように軽く頷いて笑った。




「たまにはお休みも欲しいって言ったこと気にしてますか?」

「まぁ…そうだな。それにお前働いてばっかだろ」

「私はお仕事好きですし、」




それに、と言葉が続く。




「こうして隊長に会えるのってお仕事のときだけですから、お休みはあんまり欲しくないです」




はそう言ってやんわりと微笑んだ。
日番谷は驚いたように目をぱちぱちとしばたかせ、照れたように俯いた。




「そういう恥ずかしいことさらっと言うか?」

「だって本音ですから」




相変わらずにこにこと笑っているに日番谷はかなわないとでも言うようにため息をひとつついた。




「お前が休みの時は俺も休みとるよ」

「え?」



がどうして、と言葉にする前に日番谷が口を開く。




「それなら休みでも会えるだろ。」




そう言った日番谷に、は一瞬だけ驚いたように日番谷を見て、
それから、そうですね、と嬉しそうに笑った。