「うぅ、寒いー…」

 びゅう、と風が吹いて、冬の匂いを運んでくる。ついこの間まで暑い暑いと文句を言っていたような気がするのに、季節はどんどん冬に近づいていた。
 風に乗って紅葉した葉が足元にひらひらと落ちてくる。私は思わず立ち止まって手をすり合わせた。

「何いきなり止まってんだよ」
「だって寒いんだもん」

 突然立ち止まった私を、彼が振り返る。

「ったく…」
「…いいよね、日番谷くんは私より1枚多いんだから」

 薄い隊長着が、今すごくすごくうらやましい。

 恨みがましくそう言って歩き出す。すぐに追いついて彼のとなりに並んだ。



「なァ、」
「なあに?」

 声をかけられて、彼のほうを向く。

「わ…っ」

 ぐい、と手を引っ張られて、そのままつながれた。彼はそのまますたすたと歩きだして、私は半ば引きずられるようにしてついていく。

「ちょっ…日番谷くんっ?」

 早足の彼の後ろ姿に声をかけた。

「……この方が少しはましだろ」

 突然のことに、きょとんとしてしまったけれど、すぐに嬉しくて顔がほころぶ。

「うん、ありがとう!」

 きっと顔を見せないのは照れ隠しなんだろう。
 つないだ手からあたたかさと優しさが伝わってくるような気がした。

 彼を、またひとつ好きになった。