玄関をくぐるあいつを見届けてから帰るのがいつのまにか楽しみになっていた。いつもため息とか文句とかを口に出してしまうけど、実はまんざらでもない。 子どものときから一緒に居るから多分あいつは俺のことを兄貴くらいにしか思って無いんだろうけど、俺はあいつが…… (好、) 頭の中で文字を思い浮かべただけでなんだかもう耳の辺りが熱かった。 きっとあいつにもいつか好きな奴ができて、そうしたら俺にこういう風にくっついてくることもないんだろう。多分こんなこと今だけだ。彼氏ができたら、俺以外の奴の名前を呼んで、笑って、さっきみたいに触れたりするんだろう。 ……俺以外の、誰かに。 (……クソッ) 考えたら胸糞悪い。 もう何も考えずに今日はこのままトレーニングがてら家の周りを走ってから帰ろうと、荷物を肩に掛けたまま走り出した。 |