カーテンの隙間から朝の光が差し込む。
小鳥のさえずりが小さく聴こえてくる。
そしてもうひとつ、私に朝を告げるものがやってきた。






kiss me?






「おい、朝だぞ。…教師のくせにいつまで寝てるんだ」

「んー…」



ゆさゆさと体を揺さぶられるのと同時に不機嫌そうな声が上から降ってくる。



私は朝が弱い。
特に低血圧というわけではないけれど、昔からどうも起きられない。
就職してから寝過ごして会議に間に合わなかったなんてことはないものの、ばたばたと朝食も食べずに出かけることもあるくらいだ。




「うーん…菫くん、もうちょっとだけ…」

「お前はそう言っていつもぎりぎりに起きてバタバタしてるだろ」




頭までかぶろうとした布団をはがされる。すうとした外気に肌が触れて寒い。




「じゃあ仕方ない…菫くんがキスしてくれたら起きる」

「な…っ」




うっすらと開いた瞳に、真っ赤になった菫くんが写る。それを見て、心の中で笑った。
本当はもう頭はすっかり目覚めていて、眠そうなふりをしているだけだったりする。
必死な菫くんをからかうのが面白い、という私のちょっとしたイジワルだ。

私の思った通り、菫くんは真っ赤になって寝ころんでいる私を見下ろし、固まっていた。
そんな姿も可愛いのだけれど、いつまでも眺めていてはさすがに遅刻してしまう。


私は目を開けて冗談だよ、と言おうとして、










―――――――言えなかった。










ちゅ、とくちびるに温かな感触。それが菫くんのくちびるだと気付くのに少し時間がかかった。




「…し、してやったんだから早く起きろよ」




耳まで真っ赤になった菫くんはそのままぱたぱたと寝室から出て行った。