さん、」
「はい、なんですか?先生」
「好きですよ」

 がたんっ
 がたっ ごとっ

 鈍い音を立ててインク瓶が落ちた。が手に持ったインク瓶を落としたのである。幸い蓋を閉めたあとだったためインクは散っていなかった。

「あーあ、インク落ちちゃったじゃないですか。割れてないからいいですけど」
「だだだだだっていきないそんな…!」
「いいでしょう、言いたくなったんですから」

 ぎゅう、と椅子ごとを抱きしめる轟木。は真っ赤になったまま硬直した。

「それともさんは私のことなんてもう好きではないと……」
「ちがっ、そんなことないですっ」
「じゃあどう思っていらっしゃるのですか?」

 自信たっぷりな笑みをたたえながら轟木がの耳元で問う。はますます真っ赤になりながら俯いた。

「……」
「……」

 轟木はを抱きしめたまま動こうとしない。こういうところは妙に頑固なのだ。だからこういうときはいつもが折れていたし、今回も折れるしかないようだ。

「……き、」
「聞こえません」
「…すき、です」
「ふふ、私も大好きです」

 轟木は満足そうに笑うと、の頬にキスをひとつ落とした。